4人が出産。「卵子の質を改善」する新不妊治療に色々な声


■不妊症を訴える方は年々増えている

子供がほしいのになかなか授かれない。そんな悩みを抱える男女は、意外に多い。

10年ほど前までは「10組のご夫婦のうち1組が不妊治療を受けている」といわれていましたが、最近ではその10組が「6組に1組」とまでいわれるようになり、不妊治療を受けるご夫婦の割合が増えています。

前は女性だけということが多かったですけど、最近はご夫婦で来られる方が多くなってきましたね。ここ5年くらいの間で不妊治療は“夫婦でする必要がある”と、理解が深まってきている

■その原因の一つとしてあるのが「加齢」

ミトコンドリアの働きが加齢とともに悪くなり、卵子が受精卵となりその後成長していく力が失われていくことが、卵子の老化が妊娠に与える影響のメカニズムのひとつ

晩婚化が進み、女性の妊娠年齢が上がるにつれて、求められる精子のレベルも上がっていくことにより、男性不妊も増加してきている

■そんな原因の一つ、老化によって生じる「卵子の質」を改善する新不妊治療が行われた

本人の卵巣組織から採取した「ミトコンドリア」を注入して卵子を活性化する不妊治療を行い、女性4人が出産したと21日、大阪市の不妊治療施設のグループが発表した。

加齢などで老化した卵子を体外受精させる際、本人の細胞から取り出した「ミトコンドリア」というごく小さな器官を移植することで卵子の質が改善し、妊娠しやすくなる

この治療法は米国で開発され、加齢で老化した卵子の質の改善を図る「卵子の若返り」などとしても注目されている

カナダや欧州では二百例を超す実施例があり、三十人以上出生しているが、国内で子どもが生まれたのは初めて。

臨床研究で、この方法を使った受精卵を21人の女性の子宮に戻した結果、27歳から36歳までの4人の女性が、国内では初めて無事に出産した

森本義晴院長は「卵子の質が悪く、体外受精を繰り返すしか方法がない女性にとって朗報だ」と話している。

治療を行った院長の意見です。

この治療は米企業が開発。二〇一五年十二月に日本産科婦人科学会から臨床研究としての承認を得て、同クリニックで治療が行われた。

埼玉医大の石原理(おさむ)教授(産婦人科)は「この治療が出産につながった根拠は何もない。加齢とともに増える卵子の核の異常は、ミトコンドリアで改善できないはずだ」と話している。

臨床研究で実際の効果が確かめられておらず、専門家からは有効性や安全性を疑問視する声が上がっている。

老化したマウスの卵子のミトコンドリアを観察したところ、若い卵子と比較してミトコンドリア分裂が弱くなっており、上記の遺伝子欠損マウスと類似した凝集構造が観察されました。

久留米大学の研究で明らかになっています。ミトコンドリアの活性と卵子の老化との間に関連性があることが分かったということです。

今後ミトコンドリアの形に着目した研究が進むことで、生殖医療への応用(卵子の質を評価するための検査手法、あるいは質を改善させる治療法)に繋がることが期待されます。